スプーンを曲げるか、根性を曲げるか。
(Mr.マリックさん)
親愛なる君に

Mr.マリックさんの「ベスト・オブ・超魔術」に行ってきた。
入場するときに、入り口で、スプーンを渡されてから、
ドキドキが始まった。
ラストで、全員で、スプーン曲げにチャレンジするのだ。
後ろに座っている関西弁の家族連れのお父さんが、
「カレーが出るんやで」と、子供に説明していた。
関西人は、マジックに来ても、ツッコミを入れずにいられない。
思わず、こっちも笑ってしまった。
ショウの最中、スプーンが曲がらなかったら、どうしよう
ということばかり気になっていた。
「スプーンが曲がらない人は、根性が曲がる」と言われてどきり。
結果は。
「曲がった」
そう叫んだのは、カレーのお父さんだった。
「お父さん」と、お母さんが、まるで
久しぶりに夜の生活がよみがえったような感嘆と
尊敬の声をあげた。
僕は、やっぱりいろんなことが気になって、曲がらなかった。
あちこちで、子供やおじいさんが、くにゃりと曲げていた。
雑念だらけそうなお父さんに、負けた。
硬いスプーンをポケットにねじ込み、
帰り道、もう一度念じてみた。
スプーンは、ひんやり冷たかった。

                        中谷彰宏拝
P.S.
「マリックさんのネーム入りスプーン」で、今度一緒にやろう。