机が、最高のベッドだ。
(『手塚治虫物語』)
親愛なる君に

奥田瑛ニさんのドラマ『手塚治虫物語』に感動した。
手塚さんは、やっぱりただの天才ではなかった。
努力する天才だった。
平均睡眠時間、2時間。
スタッフルームの壁には、「時間を大切に」という標語が貼られていた。
スタッフがみんな寝ている。
「はい、10分寝ました。みんな、元気に頑張りましょう」
と言うのが、リアルだった。
打ち合わせの間も、移動の間も、ペンを走らせつづけていた。
食事の間も、お風呂の中でも、本を読みつづけていた。
出版社に出かけた帰りは、
見たい映画の見たい部分をはしごして、見た。
こんな人がいたら、僕も一緒に働きたかった。
それを驚きもしないで、
淡々と笑って眺めている黒木瞳さん演ずる奥さんが、
愛に満ちて良かった。
机で寝ている光景が、僕にはなつかしかった。
僕は、いつも机で寝ていた。
それは、中学生の時から、サラリーマンになるまで、続いた。
机が、最高のベッドだ。

                        中谷彰宏拝
P.S.
手塚さんの全集を一緒に読み直そう。