ヨーロッパのお芝居は、レストランまで終わらない。
(続『ART』)
親愛なる君に

アメリカのお芝居とヨーロッパのお芝居では、
決定的に違うことがあります。
アメリカのお芝居は、観おわってから、食事をしながら、
「ああ、良かったね」
と言います。
つまり、ハッピーエンドなのです。
ヨーロッパのお芝居は、食事をしながら一緒に観た女の子に、
必ず、こう聞かれます。
「あなたは、どう思った?」
「あなたは、誰に感情移入した?」
「あなたは、あのあと、どうなったと思う?」
つまり、ネバーエンドなのです。
すべてを劇場の中で説明しないで、
解釈の余地をレストランに残すのです。
さすがは、エレベーターでも、扉は手動のヨーロッパです。
どちらがいいかは、好きずきです。

さて、昨日の『ART』の「真っ白な絵」は、どんな絵だったか?
「細い3本の平行線に、1本の細い線が交わる絵」です。
つまり、3人の男の中に、1枚の絵が乱入するという意味です。
「えっ、ほんとにそうなの?」
と、君は驚いた顔をした。
関西人の僕は、まじめな顔で答えた。
「なんやしらんけど」
「また、だまされた」
「そやかて、フランス人の書く話やで」

                        中谷彰宏拝
P.S.
君の「また、だまされた」という顔が好きだよ。