いいドラマは、部分だけでも、感動する。
(倉本聰さん)
親愛なる君に

録画・早送りと関西系イラチ(せっかち)の僕でも、
ビデオを巻き戻す瞬間に、ついつい見てしまう番組がある。
面白いドラマは、一部分でも面白い。
その一部分しか見ていないのに、心に焼きつく。
結局、全体はどういうドラマなのか知らないものもある。
そして、ある時また、たまたまテレビをつけたら、
その同じ場面に出くわした。
再放送だった。
全体を、見ていないのに、あるシーンだけを、2回見た。
しかも、食い入るように見てしまった。
僕は、シナリオを倉本聰さんの作品から、学んだ。
倉本さんのドラマは、あるシーンだけでも、猛烈に強い。
部分だけなんて、きっと叱られます。
シナリオ作家志望の詐欺師の中井貴一さんが、
憧れの脚本家の舘ひろしさんに、思い入れを話す。
舘さんは、ほとんど黙って、それを聞く。
このシーンを、何十回と見た。
実際は、2回かもしれないけど、何十回と見た気がしている。
盛り上げる音楽もなく、凝ったカメラワークもない。
今のドラマのワンシーンとしては、かなり長い。
録画ではなく、リアルタイムで見たにもかかわらず、
僕の心の中に、録画され、消去予防のためにツメを折った。

                        中谷彰宏拝
P.S.
録画してないけど、僕が、モノマネで、再現してあげるね。