お金を稼ぐのはバラエティだが、使うのはドラマになる。
(百萬男)
親愛なる君に

深夜番組の『百萬男』が面白い。
宝くじを買った直後の男性に、
筒井康隆さんが、「百萬男に選ばれました」と声をかける。
100万円を好きなように使っていいのだ。
条件は、5時間以内。
借金の支払いと、ギャンブルと、人へのプレゼントは禁止。
使いきることができなければ、使った分は自腹となる。
この日、選ばれたのは、
すでにこの番組を知ってる34歳のサラリーマンだった。
テレビで見ているときは、
「俺だったら、あっという間に使ってしまうのに、バカだな」
と思って、見ていたらしい。
ところが、実際、自分が100万円を好きに使っていいとなると、
途方にくれる。
この途方にくれてる様子に、なんともいえない哀愁がある。
雨が降っていたので、まず傘を買う。700円。
ただウロウロするだけで、いざとなったら、使えない。
ルイ・ヴィトンへ入る。
豪遊と言うと、ルイ・ヴィトンしか浮かばなかったのだろう。
ウロウロしながら、ルイ・ヴィトンに2回も入る。
たぶん、ルイ・ヴィトンへ入るのも、初めてだったに違いない。
時間は、1時間、2時間とたっていく。
喫茶店に入って、考えているうちに、30分もたっている。
100万円を使うということが、彼にとっては、もはや快楽ではなく、
苦痛になってきている。
高そうな店で、寿司を食べたが、味気なさそうだった。
しかも、その金額は、明らかに、ぼられていた。
いつのまにか、傘を持っていなかった。
動転していた。
お金を稼ぐ番組が多い中で、お金を使うのが、
どれだけ大変かというところを、うまくついた。
お金を稼ぐのはバラエティだが、
お金を使うのはドラマになる。
企画もさることながら、おちまさと さんの演出もうまい。
最後の筒井康隆さんのナレーションのあとに、
彼がすし屋で忘れた傘が落ちている。
ちなみに大阪の深夜番組では、「8万男」らしい。
8万は、8万で、難しいと思うよ。

                        中谷彰宏拝
P.S.
「百萬女」になる?