運動会で一等賞になって、死ぬほど喜べますか。
(『貧乏だけど幸せ』)
親愛なる君に

表紙の写真だけで、買ってしまう雑誌があります。
本も、表紙の写真だけで、買ってしまうことがあります。
いわゆるジャケット買いです。
最近のジャケット買いの大ヒットは、
貧乏だけど幸せ』(平凡社)です。
昭和25年から35年までの日本人の記録写真集だ。
怪人・荒俣宏さんの解説もナイスキャスティング。
表紙は、運動会で一等でゴールする人の喜びの写真だ。
テープを持っている少年を見ると、中学生だと思われる。
ゴールしているのは、たぶん女性の先生だろう。
この女性は、スカートで走っている。
しかも、裸足だ。
僕の小学生の頃は、これからまだ10年くらい後になるけど、
運動会では、裸足で走る子が、何人かいた。
それにしても、両手を広げてゴールテープを切る女性の
なんとも幸せそうな顔。
その表情は、恍惚感にひたっている。
今時、学校の徒競走で一等になって、
ここまで喜ぶ人が、どれだけいるだろうか。
一等賞という言葉も、もはや懐かしい死語だ。
いつの間にか、この歓喜の表情を僕たちは、
忘れてしまったんじゃないだろうか。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君の喜ぶ顔は、昭和20年代の素晴らしさがあるね。