イキサツという言葉に、すべての思いが込められている。
(井上陽水さん)
親愛なる君に

井上陽水さんのコンサートに行ってきました。
曲の話をすると、本何冊分にもなってしまいます。
ステージトークが、不思議な魅力でした。
2ビートで、ポツリポツリと話すのが、依存症になる魅力です。
「話すときは、考えてから、しゃべりや」
と、大阪だったら突っ込まれそうな、2ビートなのです。
ところが、これが実にクセになってしまう味わいがあるのです。
さだまさしさんや石井竜也さんのステージトークは、
練り上げられた話芸です。
それとは、対照的に、陽水さんのトークは、
練り上げない話芸なのです。
僕は、陽水さんの声も好きですが、
「詩」の世界も好きです。
言葉に対する感度が、敏感なのです。
「2階席のみなさんも……お元気ですか
……いろんなイキサツで……離れてしまいましたが」
このときの「イキサツ」という言葉に、奥深さを感じました。
「申し込むのが遅かった」「いい席が取れなかった」
「おこづかいが足りなかった」というすべてのことが、
「イキサツ」という愛のある言葉に集約されているのです。
「イキサツ」という言葉こそ、陽水ワールドなのです。
この言葉を聞けただけでも、コンサートに行ってよかった。
感動。

                        中谷彰宏拝
P.S.
トークを、全部モノマネで、ベッドの中で、話してあげよう。