お芝居は、演者も観客も、ギャンブルだ。
(『堤防の上の鼓手』)
親愛なる君に

お芝居を観に行くのは、ギャンブルです。
期待が大きすぎると、ひたすらガマン大会になる可能性があります。
勝負して、失敗することもあれば、大成功になることもあります。
お芝居とは、そういうものなのです。
フランスの太陽劇団の『堤防の上の鼓手』(新国立劇場)を
観てきました。
この作品は、今年いちばんの勝負でした。
しかも、この勝負は、大勝利でした。
期待しないでいい作品にめぐりあえるのも、うれしい。
(これは、休憩中に出るかもしれないぞ)と勝負をかけた作品が、
猛烈に面白いときは、もっとうれしい。
文楽のように黒衣(くろこ)がついて、人形を動かすのですが、
その人形も、人間なのです。
人間が、人形のように動くことで、ますます感情を感じました。
舞台は、中国。
フランス人が、東洋人の仮面を顔の上半分につけているので、
表情はないはずなのに、表情を感じるのです。
文楽にはない人形同士のキスシーンは、セクシーでした。
この舞台には、いくつもの実験がありました。
まず、楽屋が全部、見えるのです。
メイクしているところや、着替えているところも、すべてオープンです。
お芝居の始まる前から、休憩中や、終了後も、全部、見ることができました。
会場には、舞台関係者が大勢来ていました。
お芝居は、演じるほうも、観るほうも、ギャンブルなのです。
そして、ギャンブルに挑戦しなければ、
凄いものには、出合えないのです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
お芝居のギャンブルに、一緒に、つきあってね。
まだまだ話したいことがあるので、明日続きを話します。