観客だからいって、油断させないのが面白い。
(平成中村座)
親愛なる君に

中村勘九郎さんの平成中村座で、『義経千本桜』を観てきました。
平成中村座は、隅田川沿いに仮設された小屋です。
歌舞伎座に比べると、その舞台までの近さに驚きます。
「歌舞伎版・小劇場」といった熱気があります。
歌舞伎は、本来こういう小劇場演劇だったんだなと思い出させてくれます。
凄い立派な劇場もいいけど、仮設の小屋が、
お芝居には最高の劇場だという気もします。
席も面白くて、すんごい座布団・お膳・屏風つきの3万円以上する「お大尽席」
があるかと思えば、
幕が閉じると、幕の内側に入ってしまって、セットの交換まで
見ることのできる「桜席」なんていうのがある。
これが、高いのかと思ったら、安い。芝居好きには、最高の席だ。
去年の千秋楽では、入れなかったお客様が、立ち見どころか、
「羅漢」といって、舞台に座ったそうだ。
オマケに、芝居中、役者につっこまれて、見物どころか、
緊張しっぱなしだったに違いない。それも、楽しい。
目立つ4席しかない「お大尽席」のお客様も緊張していた。
観客を、油断させない勘九郎さんの演出が、すでに始まっていた。

                        中谷彰宏拝
P.S.
いろんな席に座ってみよう。
舞台と同じくらい面白い観客見物に行こう。