拍手は、バラバラに起こるのが、高度なテクニック。
(平成中村座3)
親愛なる君に

中村勘九郎さんの『義経千本桜』《忠信編》を観てきました。
今回の3部作の中では、最も踊りが難しい作品です。
お芝居を観に行く楽しみは、実は、役者さんと目が合う楽しみなんですね。
静御前役の中村福助さんが、花道から登場する場面は、驚いた。
普通、お芝居は、誰かが登場すると、
会場からいっせいに拍手が起こる。
ところが、この時は、そうではなかった。
拍手が、あっちで起こり、しばらくして、また別のところで起こる。
つまり、福助さんが目線を送ったところだけから、
拍手が起こるのだ。
これが、歌舞伎なのだ。
これが、演劇なのだ。
足もとを探る踊りをすることで、
観客と目が合う勘九郎さんの演出も、同じ狙いだ。
大劇場になると、ともすれば、非常階段の案内を見ながら、
演技をすることになってしまって、つまらなくなる。
これから、講演でも、全員と目を合わせるようにしよう。

                        中谷彰宏拝
P.S.
レターで、平成中村座のカツサンドを宣伝したら、
朝買おうとしたら、なんと、売り切れていた。
しまったと思って、念のために、休憩時間に再度チャレンジしたら、
いくつか追加されていた。
アツアツの出来たてで、ラッキーだった。