女の秘密はミステリー、男の秘密はコメディー。
(『走れ!!スミス』)
親愛なる君に

ロンドンコメディー『走れ!!スミス』を観てきました。
村上弘明さんのタクシー運転手が、東街と西通りに、
それぞれ奥さんを持って、二重生活をしている物語です。
『ジキル&ハイド』と違うところは、
どちらも、人のいいジキルさんだということです。
ジキルが変身したら、もう一人の小心なジキルだったということなのです。
翻訳の小田島恒志さん(早稲田文学部で同期)は、言います。

<アメリカの笑いには、正義があるが、
 イギリスの笑いには、正義なんて要らない>

<喜劇は、おかしな人間がいればできる。
 笑劇は、普通の人間が、おかしな状況に振り回される>

<登場人物は、うそつき野郎ばかりだけど、 正義もないので、悪もない>

正義感を振り回さないだけ、イギリスは大人なんですね。
二人の妻を持っている主人公は、
うらやましいけど、大変だよねと同情されてくる。
夫婦生活というものは、妻が一人でも大変なのだ。
演出の岡本さとるさんは言う。

<女の秘密はミステリーだけど、 男の秘密はコメディーだ>

登場人物が、まじめに演じれば演じるほど、コメディーは面白い。
いつもルー大柴さんに会うと、
「これはこれは、新劇俳優の大柴亨さん」
と、冗談を言ってたのに、もうそれが、冗談ではなくなるくらい新劇俳優だった。
客席目線で話すルーさんしか知らない観客は、
演技の自然さに驚くに違いない。
二人の妻のうち、細川ふみえさんが、お色気タイプをやると思っていたら、
意外にも、まじめな妻のほうで、
それが、ふみえちゃんのナイーブな感じが出ていてよかった。

                        中谷彰宏拝
P.S.
だから、男の秘密は、大目に見てあげてください。