シリアスな舞台でも、自在にオナラをする。
(竹中直人さん)
親愛なる君に

蜷川幸雄さん演出の『四谷怪談』を観ました。
冒頭、いきなり、ホリゾントまで開いて、渋谷の街が見えたのは、
街頭演劇のように、驚きました。
その下では、奈落の下で、回り舞台を回す人夫まで、
見せられて、おまけにセリフまであって、
いきなり蜷川ワールドにひきずりこまれました。
それにしても、美空ひばりを舞台上で歌っても、
まるで、都々逸(どどいつ)を唄っているように聞かせてしまう竹中直人さんは凄い。
宅悦が金を受け取ろうとしないと、
ポンと観客にその小判を渡してしまうのも、どきりとする。
観客に渡された小判を、さりげなく取り戻す田口浩正さんの芝居もいい。
ああいうフォローが実は難しい。
客席の通路を全部、花道にしてしまった。
竹中さんが、蚊帳をお岩から奪って去るところで、
得意の自在に出るオナラをした。
舞台で、オナラをできるのも、竹中さんぐらいだ。
たまたまではなく、実にいい場所、いい間で出た。
シリアスなドラマの中でのオナラは、実にリアルだ。
これを聞けた観客は、ラッキーだったに違いない。
それを聞くだけでも、オークションでチケットを買う価値がある。
オナラが凄いのではなくて、
オナラという荒業をしても舞台が崩れない堅固な演技があるのが、凄いのだ。

                        中谷彰宏拝
P.S.
聞き逃したなら、もう一回、観に行く?