名簿を暗記して、出席をとり始めた。
(西江雅之先生)
親愛なる君に

『課外授業 ようこそ先輩』(NHK)に、西江雅之先生が出られていました。
「それでは、まず、ご挨拶に、出席をとりましょうか」
僕は、「おや?」と思いました。
大学時代、西江先生は出席なんて、一度もとっていないのです。
しかも、仲良くなるには、まどろっこしい儀式です。
「井上君……」
最初は、子供たちは気づかなかった。
2人目、3人目を呼びはじめた時、
子供たちは、気づきはじめました。
50音順ではないのです。
しかも、西江先生は、名簿を手に持たずに、出席をとっているのです。
なんと、生徒の名簿を暗記してきたのです。
しかも、たった1回の授業のためにです。
これには、子供たちも、「やられた」と思ったでしょう。
「何をするにも、ちょっとした努力がいるんです」
と、名簿を暗記してきたことを、照れながらばらしました。
子供たちとの距離を、一瞬にして縮めました。
この番組は、子供たちとの距離を、
いかに短時間で縮めることができるかが、もうひとつの、隠れテーマです。
それこそが、教育のいちばん大事なテーマでもあります。
西江先生が、いかにアフリカの部族の中に入っていくかという技の
考え方を、教えられました。
いかに人と人がコミュニケーションをとっていくかを研究する西江先生にとって、
言語の先生は、そこに住む人々なのです。
つまり、そこに入っていくことが、学びであり、学校なのです。
西江先生は、会うたびに、いろんなことを教えてくださいます。
また、大きなことを、ひとつ教わりました。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君にも、いつもコミュニケーションを教わっています。