天才マエストロは、夕立にも指揮をする。
(小沢征爾さん2)
親愛なる君に

「優等生なんだよね」
と、小沢征爾さんは笑って言いました。
一流の若手演奏家たちに、天才マエストロは、
大きな課題を提示しました。
「君たちの演奏は、きちんとして、正確だけど、
きちんとしすぎている。もっと、ダーティにやってみようよ」
若者たちは、笑いました。
その笑いは、ふざけた笑いではありませんでした。
感動した笑いでした。
日本の道徳と違って、欧米人は、感動した時にも笑います。
「きれいすぎんようにな」
というのは、僕のコマーシャルの師匠・藤井達朗の教えでもあります。
合宿所に、突然、すごい夕立が襲いました。
小沢さんは、雷や雨の音を聴いていました。
誰も、雷や雨の音を聴いていませんでした。
でも、僕は聞こえたような気がします。
「雨、もっと激しく。雷、いいよ、サンキュウ。はい、風」
天才マエストロは、夕立にも指揮をしていたのです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君のまじめさは、もう知ってるから、
たまには、優等生でなくても、いいよ。