ブランコって、エッチな乗り物だったんだね。
(劇団四季『コンタクト』)
親愛なる君に

劇団四季のミュージカル『コンタクト』を観てきました。
トニー賞4部門受賞というだけあって、
さすがにユニークで面白かった。
莫大な予算をかけた作品もいいけど、
こういうアイデアとテクニックと思いのある作品が僕は好きだ。
お話は、3つのエピソードになっている。
これは、ミュージカル版『世にも奇妙な物語』だ。
18世紀・50年前・現代の3つだ。
パート2「50年前篇」では、レストランで不幸な妻が
ダンスを始める幻想を持つ。
冷たい夫が戻ってくると、それまで踊っていたほかの客やウエイターたちが、
何事もなかったように、もとに戻るところが見せ場。
パート3「現代篇」では、43歳のCMディレクターという
僕と同じ設定に感情移入した。
ダンスの天才、加藤敬二さんが、ダンスのできない男という設定で
下手に踊るところが、面白い。
僕が一番やられたと思ったのは、パート1「18世紀篇」だ。
ブランコに乗る貴族の妻を描いたフラゴナールの絵から物語は始まる。
ブランコに乗る貴族の妻が、夫のいない間に
ブランコを押していた召使の男と不倫をする。
ブランコって、こんなにエッチだったのかと驚いた。
そういえば、ブランコって、男よりも女の子のほうが好きだよね。
ブランコのスイングや、めまい感って、セックスそのものなんだね。
奥さんと召使が、ブランコに向かい合って座ってこいでいるところの
なんとセクシーなことか。
そこへ、夫が戻ってくる。
さて、どうなったでしょう。
不思議なことに、夫と召使が上着を交換した。
つまり、貴族の奥さんと夫が、
召使と不倫をするという設定の「プレイ」を楽しんでいたというオチだ。
そして、二人の男が入れ替わって、
最初のフラゴナールの絵に戻る。
観客は、フラゴナールの絵にだまされていたという仕掛けだ。
そうやって絵をもう一度見ると、
確かに、絵では召使の男のほうが老けている。
これが、ヒントだったのだ。
ただの浮気を描く物語よりも、
数段、人間描写の奥が深い。
だから、3つのエピソードの中で、
もっとも短いこのお話が、僕は一番好きだ。

                        中谷彰宏拝
P.S.
今度、一緒にブランコに乗ろう。