うなぎより、タレの染み込んだごはんがおいしい。
親愛なる君に

僕が最近、気に入っているのは、
「うなぎおにぎり」です。
朝早く行かないと、すぐ売り切れになってしまいます。
ごはん全体が、うなぎのタレの味が染み込んでいるのです。
うなぎ自体が、入っているわけではありません。
いや、入っているのかもしれないけど、
入っているかもしれないという程度です。
それでも、おいしいのです。
声を大にして、言います。
うな重は、うなぎよりも、うなぎのタレのかかったご飯のほうがおいしいのです。
「そんなに言うなら、うなぎはちょうだいね」
と言うなら、あげてもいい。
そのかわり、うなぎのタレのかかっているご飯をちょうだいね。
うな重のうなぎのなくなったあとの白いごはんほど、
寂しいものはない。
それは、もはやうな重のごはんではなく、ただのごはんだ。
アダルトビデオの制服モノは、裸になってしまったら、
ただの裸で、つまらないというのと同じだ。
僕は、本を書く時、どこをとっても、
おいしいタレがじっくり染み込んだ本を書きたいと思います。
うなぎと交換してもいいと言われるくらいの、
タレの味のしっかりした本にしたい。
うなぎのタレの染み込んだごはんをおかずに、白いごはんが食べられるくらい。
そんな本にしたいよね。

                        中谷彰宏拝
P.S.
タレは、染み込んでるかな。