小堺さんの面白さは、小返しの面白さです。
(小堺一機さん『おすましでSHOW』)
親愛なる君に

小堺一機さんの『おすましでSHOW#18』(シアターアプル)を
観てきました。
面白くて、笑ってる女の子が椅子を揺らすので、
がくんがくんなりながら、観ました。
小堺さんのSHOWの面白さは「小返し」の面白さなんですね。
「小返し」というのは、リハーサル中に、もうちょっと前のところから
戻ってやり直すという演劇用語です。
リハーサルは、本番より面白いというのが、演劇の宿命です。
小堺さんのSHOWは、小返ししていくことで、
リハーサルと本番の両方を見ていく楽しさがあるのです。
お客さんは、2回観ることができて、だから、時間も2倍かかるのです。
小堺さんのお芝居は、先に詞を言う歌声喫茶コメディ版です。
同じことを、何度も一生懸命繰り返すことで、
まったく変わるのではなく、
微妙に変わってくるズレのプロセスが、楽しいのです。
それが、いちばん難しいのです。
素人のNGは、ただのNGですが、プロのNGは、味わい深いNGなのです。
素人が繰り返しても面白くないけど、
名人が繰り返すと、二度とも、面白いのです。
落語で、知らない話より、知っている話のほうが面白いのと同じです。
「小返し」は、ビデオでいうと「巻き戻し」です。
ビデオは、何度巻き戻しても同じなのだけど、
ホラー映画『リング』では、ビデオを巻き戻すたびに、
映像が微妙に変わり貞子の幽霊が出てきました。
この微妙に違うというところが、怖かったのです。
小堺さんのSHOWは、『リング』の呪いのビデオのコメディ版なのですね。

                        中谷彰宏拝
P.S.
夜、ベッドの前にあるテレビから、小堺さんが出てきそう。