棒アイスは、当たれと念じながら食べる。
(富田靖子さん)
親愛なる君に

ドラマ『死蛍』の撮影中、床島佳子さんがアイスクリームの差し入れを
してくれました。
僕も、ひとつもらって、一生懸命食べていると、
観察力の鋭い富田靖子さんが、すかさず言いました。
「中谷さん、棒アイス、食べなれていないですね」
「うん、どちらかというと、カップアイス派だね」
「食べ方が、ぎこちないもん」
その時も、僕は、棒アイスが多い中で、
小倉モナカタイプのものを選びました。
ところが、その袋が、なかなか開けにくく、
食べにくいアイスでもたもたしているところを、靖子ちゃんに見つかったのです。
商品としては、これは失敗だなと思っていると、
最後に、不思議なものが出てきました。
「あ……」
それは、棒だったのです。
てっきり小倉モナカだと思っていたのは、棒アイスだったのです。
差し入れのアイスは、すべて棒アイスだったのです。
僕は、棒アイスを棒を持たずに食べていたのです。
逆にいえば、これはかなり器用なことですよね。
その時、僕は、東京駅のポスターを思い出しました。
当たりつき棒アイスの広告でした。
当たりつき棒アイスを食べる時は、
「当たれ、当たれ」と念じながら、食べます。
「当」が出て、「た」が出ると、「よしっ」という気持ちになります。
そして、「当たれ」と念じたかいがあったと、涙ぐみながら、
最後に出てきた言葉を見ました。
「れ」でした。
「当・た・れ」
これが、最近僕にとっての、最高にヒットしたポスターです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君に、当たりがでますように。