100人のうち1人に気づいてもらうために、隠し技をする。
(本のカバー)
親愛なる君に

僕は、本のカバーが大好きです。
本を読むのは、速いですが、カバーを眺める時間は、長いです。
それくらい、カバーからメッセージや波動が伝わるのです。
普通、カバーのデザインは、著者の仕事ではありませんが、
僕はぎりぎり一杯まで、粘り、注文します。
たとえば、『眠れない夜の数だけ 君はキレイになる』の場合。
ベースの色調は、ブルーにしました。
ブルーは、よく眠れる色だからです。
だから、今度作り直す僕の寝室のカーテンは、ブルーにしました。
眠れない時、この本を枕もとに置くだけで、すやすやと眠れるように、
ブルーなのです。
なぜそうなのかという理由が、たくさんあります。
隠し技も、たくさんしています。
本の上に、12匹の羊が描かれています。
本当は、その1匹をこっそり逆向きにしておいたらどうか、
という提案をしました。
その逆向きの1匹が、眠れないで悩んでいる読者自身なのです。
ところが、本の製作は発売締め切りとの戦いでもあります。
もうこの段階では、羊の向きを変えることは、できませんでした。
でも、僕は諦めません。
少しでもよくできることは、ギリギリまで粘ることを、
博報堂時代に叩き込まれました。
じゃあ、シルバーの色を抜きましょう。
結局、12匹の羊のうち、1匹だけが白い羊になっています。
こういう工夫は、読者の人が気づかなければ、それまでです。
でも、100人のうち、1人でも、
「あっ、これって……」と、気づいてくれれば、僕は幸せです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君が気づいてくれて、僕はうれしかった。