息をするのも忘れて、ボツ原稿を書き続けていた。
『ジェットストリーム』
親愛なる君に

『ジェットストリーム』の10枚組CDを買って、聴いています。
僕は、20代の頃、毎晩12時からFM東京で『ジェットストリーム』を
お風呂で聴くのが、唯一、ほっとできる時間でした。
その頃は、毎日、ボツ原稿を書いていました。
サラリーマンもしていたので、
一日中、息を止めて仕事をして、
呼吸することを思い出すのは、その時間だけでした。
電気を暗めにして、バスタブで『ジェットストリーム』を聴くと、
そのまま眠ってお湯の中に沈んでいってしまいそうになるくらいでした。
普通、音楽番組のナレーションは邪魔になるのに、
城達也さんのナレーションは、
何度聴いても嫌味でなくて、書き起こして暗唱していました。
城さんは、スタジオを昼間でも暗幕を張って真っ暗にして
夜間飛行のイメージを作ってナレーションを読んでいたと、
博報堂のミキサーさんから聞きました。
1時間の『ジェットストリーム』が終わると、
それからまた、原稿を朝まで書くのです。
『ジェットストリーム』を聴くと、
ほっとすると同時に、
ボツ原稿を書き続けていた頃の熱いものが、血の中にわきおこってきます。
原稿を、書きたくなってきた。

                        中谷彰宏拝
P.S.
呼吸をするのを、忘れていませんか。