仁徳天皇陵が、1周3.5キロのランニングコースだった。
親愛なる君に

東京に来たての頃、必ずこんな会話があった。
「出身、どこ?」
「大阪」
「大阪のどこ?」
「堺市」
「……ふーん」
知らない人は、今ひとつピンとこない。
街を説明する時に、ビジュアルのイメージが必要になる。
南蛮貿易では、ビジュアル力がやや弱い。
そこで、こんな説明になる。
「社会の教科書のグラビアに、仁徳天皇陵の写真があったでしょ」
「あった、あった」
「あれが、堺市」
「へえー」
これで、急に「知ってる」ということになった。
仁徳天皇陵の航空写真には、すぐそばにあった僕の高校も
右上のほうに写っていた。
左下には、例の図書館もあるんだけど、
教科書の写真は、かなり古い写真を使っているので、
写っていなかったりした。
仁徳天皇陵は、僕たちのランニングコースでした。
世界最大の古墳は、1周3.5キロ。
皇居が、1周5キロだから、いかに大きいか、わかるでしょ。
それを3週するのが、メニュー。
まっ平らのように見えて、アップダウンがあります。
その間に、水分補給のための自動販売機は、1台しかありませんでした。
ちなみに、「O-157」も「毒グモ」も、堺市です。

                        中谷彰宏拝
P.S.
白菊という看護学校もあって、女の子たちが出てくると、
スパートをかけなければならなかったのです。