いつも、「フフ……」と微笑んでる人が、凄い。
(役所広司さん)
親愛なる君に

役所広司さんの「軽さ」が好きです。
役所さんは、大声で話しません。
普通の役者なら、低音で凄むところを
役所さんは、逆に、小さく、高めの声で話します。
それがまた、迫力があるのです。
なぜかと言うと、声の小さい人が小さい声で話しているのではなくて、
出せば大声の出る肺活量の大きな人が出す、小さな声だからです。
小さなアンプの大音量より、
大きなアンプの小さい音のほうが、響くのです。
さらに、役所さんは、セリフの合間に、
「フフ……」と、小さな笑い声が入るのです。
「フフフ」ではなく、「フフ……」なのです。
これは、たぶん、台本には書かれていない味つけです。
嫌味ではなく、いかにも優しさが伝わるのです。
これが、ますます「軽さ」をかもし出しているのです。
経済番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京)は、
役所さんのストーリーテラーの部分が好きで、いつも見ています。
ヘリコプターに乗り込みながら携帯で奥さんに言う、
「わかったよ、大根とトーフだろ?」というセリフを、
僕は自分が演技をする直前、軽くするために、
モノマネしています。
万里の長城でのロケでも、
役所さんは、「フフ……」と笑ってました。
世界遺産の中で、ユニットバスに入っているようには、
なかなか微笑むことは、できるものではありません。
さすがです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君に何かを言う時も、いつも、「フフ……」と微笑んでいるようにします。