アンに皮を塗りながら焼くから、おいしい。
(浪花家總本店のタイヤキ)
親愛なる君に

麻布十番に食事に行くと、
必ず「浪花家總本店」のタイヤキを買って帰ります。
僕のタイヤキ部門ベスト1です。
食事のついでに買うというより、
タイヤキを買うために、麻布十番に食事に行くという感じです。
大人気で、普通、30分待ちなので、
食事をする前にお願いしておいて、
帰りに寄ると、ちょうどいい感じです。
難点は、よくテレビに紹介されるので、
テレビに出ると、しばらく「4時間待ち」となってしまうことです。
「浪花家」のタイヤキは、皮がおいしい。
タイヤキは、アンが主役で、皮が脇役ではないのです。
「アンが尻尾の先まで詰まっている」という表現は、
皮を見下した発想でしかないのです。
皮も、主役なのです。
たいてい、タイヤキは、タコヤキと同じように、
型の中に、皮の粉を流し込んで、その中に、アンを入れていく焼き方です。
「浪花家」のタイヤキは、皮の粉を、アンに塗りながら焼いていくのです。
これが、タイ蒸し焼きではなく、本当のタイヤキです。
だから、皮が薄くぱりっとしているのです。
だから、1個ずつしか焼けないのです。
だから、時間がかかるのです。
だから、おいしいのです。
どんなに人気が出ても、大量生産しないのが、味が落ちない理由です。
とりあえず10個買っても、必ず足りなくなります。
「秘書室のみんなにも、買って帰ってあげよう」
「その後、編集者との打ち合わせがあるから、その分」
「その後、取材があるから、その分」
「その後、花岡先生のところにダンスのレッスンに行くから、その分」
「冷めてもおいしいから、明日の朝ごはん用の分」
という計画を立てても、いつも
帰りのタクシーの中ですでに、2個食べてしまう予定外のことをしてしまいます。
結局、花岡先生のところの差し入れどころか、
秘書室への差し入れが、ギリギリいっぱいになります。
今度は、タクシーの運転手さん分も、計算に入れておこう。

                        中谷彰宏拝
P.S.
足りなくなったから、麻布十番に、明日も、ランチを食べに行こう。