本が好きな人は、「代表作」という言葉を、使わない。
親愛なる君に

「代表作は、なんですか?」と聞かれることがあります。
残念ながら、ありません。
「わかりません」というのが、正確です。
代表作は、書き手が決めることではなくて、読む人が決めることだからです。
「いちばん売れている本」イコール「代表作」でもありません。
すべての人に共通の代表作は、ないからです。
代表作は、一人一人にとって、違っていいのです。
むしろ、違うのが当たり前なのです。
プロフィール欄に、「代表作は……」と書かれると、
ちょっと変な感じです。
それって、誰が決めたのか、よくわからないからです。
「代表作」という言葉自体、受験勉強っぽいですね。
「代表作」より「代表代理作」や「代表補佐作」や「代表扱い作」のほうが、
面白そうです。
「代表作を、早く書いて下さい」と言う読者の人もいます。
「すいません」と謝るしかないですね。
「いちばん最初に、何を読めばいいかな」とか、
「1冊だけ読むとしたら、何を読めば、読んだことになるかな」
っていうことかな。
そう考えると、きっと「代表作」って、本が好きな人が使わない言葉ですね。

                        中谷彰宏拝
P.S.
「中谷彰宏の代表作は、なに?」って、友達に聞かれたら、
もっとも「代表不作」を教えてあげてください。