ずっと前の言葉を覚えていてくれるのが、うれしい。
(中江有里さん)
親愛なる君に

「中谷さんは、家ではサテンのガウンを着て、
ワイングラスをコロコロ転がしているんでしょ」
と、よく言われます。
そんなことは、ありません。
たしかに、ドラマでは、そういう役柄が少なくありません。
みんながそういう誤解をしているから、そういう役が来てしまうし、
そういう役を演じているから、「やっぱりそうか」と、納得されてしまいます。
「ガウンで、ワインをコロコロしているのを見た」という目撃談は、
「ドラマで見た」のであって、実際に見たわけではないのです。
でも、人間の脳は、ドラマで見たことと実際に見たことの棚が、
分かれていないようですね。
土曜ワイド劇場『変装婦警の事件簿3』では、珍しく、貧しい新聞記者を演じました。
4畳半一間のアパートでの撮影は、豪邸ばかりで撮影しているので、新鮮でした。
この4畳半一間のアパートは、
なんと、西新宿のパークハイアットのすぐ隣にあったのですから、
スタッフもよく見つけたものです。
「中谷さんに『有里ちゃんは、うちの犬に似ているね』と言われたのが、
印象的でした」と、妻役の中江有里さんに、ホームページで紹介していただきました。
有里ちゃんは、犬顔っぽいところが可愛いと思うんだけど、どうですか。
このドラマは、1年前に撮影されたものです。
「1年前」というと、ずいぶん放送されなかったんだなと思うかもしれませんが、
ドラマの撮影は、たいていそんな感じです。
「半年後」にオンエアになったら、早いほうです。
「今撮ってるドラマは、いつ放送ですか?」と聞かれても、
まったくわからないのです。
ある女優さんに聞いたら、
「6年前」に撮影したドラマが、やっと放送されたそうです。
もちろん、再放送ではありません。
「1年以上前の撮影なので、よく覚えていないけど、中谷さんにそう言われたのを
覚えています」と、有里ちゃんが言ってくれたのが、僕はうれしかったです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君が大昔に言ったことも、僕は覚えているよ。