僕は、子供の頃、スーパーマーケットに住んでいた。
親愛なる君に

僕は、高校生になるまで、スーパーマーケットに住んでいました。
家中に、マネキンがごろごろ立っていて、
スーパーのカゴが山積みされていました。
言ってみれば、豪邸よりも、大きな家でした。
部屋がたくさんあって、部屋から部屋への移動は、
いったん靴を履いて、部屋の前で靴を脱ぐシステムでした。
だから、その部屋に今、誰がいるか、よくわかりました。
夜、トイレにいくのは、半端じゃなく、怖かった。
スーパーに寝泊りしていると考えてみてください。
僕が今、サービス業の仕事をしているのも、
スーパーに住んでいる幼児体験からですね。
スーパーは、やがて、いろんな店舗に変わりました。
これも、いろんな勉強を僕にさせてくれました。
両親がやっていた、スナックは35年続きました。
おじさんがやっていた、お好み焼き屋さん。
保険会社も、入っていて、毎朝、朝礼で社是を唱和する声も、聞こえていました。
父親は、学習塾をしたり、碁会所をしたりもしました。
豪邸で育つより、大きなスーパーマーケットで育ったことが、
今の僕を育ててくれました。
子供育てるのは、親・先生・街など、たくさんありますが、
家も育ててくれるのですね。

                        中谷彰宏拝
P.S.
僕は、いまだにスーパーマーケットの匂いが好きです。