ボウリングも将棋も、独り言で勝負が決まる。
親愛なる君に

ボウリングの試合中は、ずっと
ぶつぶつ独り言を言っています。
まわりの選手に迷惑になるので、
もちろん頭の中での独り言です。
「あそこでこう曲がったから、次はこのレーンでは、
何枚目を投げよう」とか、
「いま、曲がりが弱かったのは、オイルが伸びているからか、
投げ方が悪かったからか」とか、
投げていない間、ずっと独り言が、頭の中で渦巻いています。
僕は、高校の時は、将棋部でした。
将棋もやはり、「ああ来たら、こう行く。こう行ったら、ああ来る……」
という独り言の世界です。
ボウリングは、将棋に似ています。
一見、全然、別のゲームのようですが、
将棋とボウリングにはまるということは、
両者に共通点があるからだということに、
最近、気がつきました。
ワンゲームは、10分。
実際に投げるのは、2分。
残り8分は、独り言の世界です。
ワンボックス(2レーン)に6人の選手が入ると、
ワンゲーム30分かかりますから、ワンゲーム28分間の独り言。
6ゲームマッチになると、28分×6ゲームで、3時間近く独り言を
話し続けていることになります。
一見、ポーカーフェイスに見えますが、
それは独り言を追いかけているからです。
まるで、映画『ビューティフル・マインド』の主人公の数学者のようなノリです。
でも、僕は、独り言が、嫌いではありません。
むしろ、かなり好きです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君の独り言も、好きです。