そら、しゃあないわ。
(僕の扇子の言葉)
親愛なる君に

ボウリングをしている最中、僕は扇子を使っています。
冬でも、暖房で暖かいのと、
ミスをしたあと、かっと熱くならないようにです。
僕が扇子であおいでいる時は、暑い時ではなくて、
ミスをしたあと、頭を冷そうとしている時です。
扇子には、筆でひと言書いてあります。
「なんて、書いてあるんですか?」
と、まわりの人に聞かれました。
きっと、作家だから、凄いことを書いているに違いないと、
思われたかもしれません。
よく、将棋の棋士も、座右の銘を扇子に書いています。
恥ずかしいので、「しょうむないことです」と、答えてそっとその人だけに
見せました。
その人は、意外な顔をして、一瞬、笑いました。
そして、言いました。
「それって、大切ですね」
ある時、その扇子を忘れて帰りました。
それで、書いてある言葉が、みんなにばれてしまいました。
僕の扇子に書かれている言葉は、こうです。

〈そら、しゃあないわ〉

よく、扇子を忘れます。
試合の時は、夢中になったり、動転したりしてますからね。
名前を書いていませんが、その言葉のおかげで、
僕の扇子は必ず戻ってきます。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君が落ち込んでいる時は、〈そら、しゃあないわ〉の風を、
送ってあげるね。