自分のひじかけは、通路側が国際ルールです。
親愛なる君に

「グリーン車は、もったいないから、自由席でいい」と、
うちの両親は言います。
それでも、「疲れないから、グリーン車に乗ってください」と、説得して、
乗ってもらいました。
すると、「やっぱり、グリーン車はいい」と、喜んでいました。
父親がグリーン車を喜んでいる理由を、母親から聞きました。
「ひじかけをとられなくてすむ」という理由なのだそうです。
うちの父親は、顔はヤクザ映画なのですが、
性格はシャイです。
シャイな父親は、両隣の人がひじかけを使ってしまうと、
間にはさまってしまって、小さくなってガマンしてしまうのです。
「私は、『ちょっと、すいません』って、いくらでも、言うけどね」
と、母親は笑っていました。
グリーン車は、自分用のひじかけがあるから、安心なのだそうです。
映画館でも、困るよね。
国際ルールでは、ひじかけは、通路側のほうが、自分用です。
いちばん奥の人は、両方使えます。
シャイな父親のために、よろしくお願いします。

                        中谷彰宏拝
P.S.
ひじかけをうれしそうにこすっているヤクザ映画顔のおじさんを見かけたら、
それは、うちの父親です。