すき焼きは、料理の王様でいてほしい。
親愛なる君に

ご馳走してもらうなら、
すき焼きとしゃぶしゃぶのどちらを選びますか?
「モーモーパラダイス」に行くと、
すき焼きもしゃぶしゃぶも、どちらも1500円で食べ放題です。
昔のすき焼き食べ放題は、いまいちでしたが、
モーパラの食べ放題は、なかなかいけます。
にもかかわらず、まわりの若者たちのほとんどが、
しゃぶしゃぶを選んでいるのです。
「すき焼きのほうが、エライ」と思っているのは、
年寄りなのかなと、ショックを受けました。
しゃぶしゃぶは、平日でも食べることができますが、
すき焼きは、日曜祝日しか食べることはできません。
しゃぶしゃぶを食べる口実はいりませんが、
すき焼きは、大事なお客さんが来るとか、
お祝い事があるとか、一家の宮廷料理だったはずです。
しゃぶしゃぶは、先週食べても、また夕食になりますが、
すき焼きは、中1か月はあけなければなりませんでした。
ダンスの花岡律子先生は、しゃぶしゃぶ派でした。
「だって、すき焼きは、家で食べるものだから……」
そういう考え方もありますね。
花岡浩司先生が、律子先生の実家に行くと、
一度、すき焼きをほめて以来、いつもすき焼きだそうです。
僕は、サラリーマン時代、忘年会の幹事をする時は、
必ず、すき焼きにしていました。
狂牛病と不景気で、お気に入りの高級すき焼き店が、
電話をかけるたびに、次々とつぶれています。
すき焼きの一料理化は、
戦争に負けたあとの天皇の人間宣言と同じくらいの衝撃です。
すき焼きが、日常化するということは、
不景気なのではなくて、豊かになったということなんですね。
でも、すき焼きが楽しみだったというのも、
ある豊かさだったような気がします。

                        中谷彰宏拝
P.S.
「モーパラ」のすき焼き&しゃぶしゃぶMIX食べ放題を
選ぶ君も、好きだよ。
鍋係の僕は、両方をつくる忙しさに、燃えます。