坂の上には、景色がある。
親愛なる君に

僕は、これまで住む所を、窓からの景色で決めてきました。
そうなると、どうしても高層階になります。
ただ、高いフロアというだけで選んでは、素晴らしい景色を
毎日ながめることはできません。
同じ15階でも、高い土地にある15階と低い土地にある15階では
高さがまったく違うからです。
高い土地にある5階が、低い土地にある15階建ての建物の
屋上を見下ろすこともあるのです。
渋谷の道玄坂の上にあるレストラン「レガート」は、
15階にあるけど、かなり高く感じます。
ラブホテル街なのに、看板がひとつも見えないくらい高い。
僕の住んでいる表参道も、高い土地です。
赤坂・渋谷・原宿・西麻布へ、それぞれかなり下りになります。
これだけ高層ビルが建ってきても、
窓からの景色は、削られずにがんばっています。
「東京は、坂が多いね」
と、上京した父親が言いました。
大阪には、東京ほど、坂はありません。
僕が子供のころ住んでいた坂の街・神戸の六甲の窓から、
神戸港まで見えました。
その景色が、僕の原風景なんですね。

                        中谷彰宏拝
P.S.
窓から景色を見る君も、好きです。