誰一人が欠けても、その本は読めなかった。
(本の謝辞)
親愛なる君に

「あとがき」に、「……さんに感謝します」という謝辞が入っている本が、
よくあります。
僕は、あえて、それを入れていません。
お礼を言わなければならない人を書きはじめると、
映画のエンドクレジットと同じくらい長くなってしまうからです。
実際、アメリカの本などでは、
2ページにわたって、小さい活字で、「スペシャル・サンクス」の名前が
並んでいます。
僕も、初期のメディアファクトリーの達人シリーズで、
映画と同じように役割と名前を載せたことがありますが、最近はしていません。
たくさん載せれば載せるほど、はみ出た人のことが気になるからです。
「全部載せるか、まったく載せないか」の選択になります。
本を書いてから、読む人の手に渡るまでに、
かかわった人の数は、1冊の本で、数百人に上るでしょう。
どの一人が欠けても、読む人の手には渡らなかったのです。
そんなことを思い浮かべながら読むと、一味違う気がします。
そんなことを思い浮かべながら、僕は書いています。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君にも、スペシャル・サンクス。