失敗を観ることで、生の芸の凄さを思い出さされる。
(『キダム』)
親愛なる君に

舞台は、やっぱりビデオで観るのと、生で観るのは違いますね。
『キダム』は、ビデオで観たことがありました。
でも、生で観ると、迫力が違いました。
案内役の道化のジョンを見た時、
中島薫さんの貸し切りだったので、
とうとうタイガー・ウッズを薫さんが連れてきてしまったと思ったくらい似てました。
少女たちによるチャイニーズ・ヨーヨー、「ディアボロ」は、
これまでに観た「ディアボロ」の中でも、いちばん凄かった。
何よりも凄かったのは、1人の少女が失敗して、
コマが客席の中に転がり込んだことでした。
ひやり、としました。
この瞬間、これはトリックではなく、生の芸なのだということを、
思い出さされました。
成功ばかりしていると、トリックのような気がして、
ついつい、生の芸であることを忘れてしまうのです。
少女たちは、その後も、真剣に続けました。
観客は、その後、座り直して観た気がします。
カーテンコールで、薫さんが、タイガー・ウッズにステージに招かれた時、
「ディアボロ」の少女のマネをしました。
薫さんも、少女の一生懸命さにきっと心を打たれて、
賛辞のモノマネだったのです。
さすがです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
その夜も、凄いものを観ることになります。
それは、明日のレターで、話すね。