スーパーマンを演じた男が、スーパーマンになった。
(クリストファー・リーブさん)
親愛なる君に

『スーパーマンの奇跡』というドキュメンタリーを見ました。
スーパーマンを演じたクリストファー・リーブさんが、
落馬事故で、半身不随どころか、全身が動かせなくなってしまいました。
ここまでは、スーパースターは、悲劇に遭遇する
というハリウッドのジンクス通りでした。
でも、ここからが、違いました。
リーブさんは、恐るべき精神力でリハビリを続けました。
カメラの前で、リハビリの成果を見せました。
一見、リハビリは、失敗に見えました。
リーブさんの体は、ピクリとも動いていなかったからです。
でも、リハビリの協力するするスタッフは、大歓声をあげました。
よく見ると、左手の人さし指が、微妙に震えるくらいに動いていたのです。
僕が、驚いたのは、その時、
リーブさんが、まるで重量挙げの選手のように歯を食いしばって
人さし指を動かしていたことです。
額には、汗が光っていました。
スーパーマンとして、空を飛んでいた時より、もっとカッコよかった。
新聞のコピーも、カッコよかった。
「クリストファー・リーブは、かつては、スーパーマンを演じた。
そして、今、スーパーマンに、なった」
そして、人さし指が、かすかに動くようになったスーパーマンは、言いました。
「来年は、映画を監督するよ」
スタッフが言いました。
「『スーパーマンvs.バットマン』っていうのを、みんな見たがってるよ。
どっちが、強いかって」
その時、スーパーマンは、笑って答えました。
「スーパーマンは、空を飛べるんだよ」

                        中谷彰宏拝
P.S.
指が震えて動くところに、テーマ曲が聞こえてきて、涙が出た。
幻聴でした。