体全体で食べると、おいしくなって、おいしい音が出る。
親愛なる君に

すき焼き屋さんの仲居さんに、ほめていただきました。
「おつけものを、おいしいそうな音をさせて、食べられますね」
自分では、まったく気づきませんでした。
「おいしそうに食べる」というのは、
子供の時から言われています。
今、ホテルやレストランの仕事をしていて、
総支配人やシェフと一緒に食べていても、言われます。
「おいしそうに食べる」結果、「おいしい音が出る」ということなのでしょう。
あご全体を使って食べると、おいしそうに見えるみたいです。
実際、おいしくなるのです。
嫌いなものを食べる時って、口先だけで、食べてますね。
口の奥だけじゃなく、頭全体、体全体で味わうと、おいしくなるのです。
「おいしそうな音を出して食べる」というのも、
こっそり食べる時は、困ったこともあります。
歌舞伎を見ながら食べる時は、音の出ない「ぬれおかき」にしています。
ローソンの有明のりのパリパリおにぎりを、
タクシーの移動中に食べる時も、
運転手さんに内緒で食べることができません。
おいしそうに食べる効果音にこだわるのは、
コマーシャルを作っていた職業病ですね。

                        中谷彰宏拝
P.S.
おいしいものを食べる時、口の奥の奥まで、入れて味わう君も好きだよ。