幽霊の怖さは、いきなり現れることより、ボンヤリ消えること。
(イッセー尾形さん)
親愛なる君に

イッセー尾形さんの「2003年春新作一人芝居」を観てきました。
また、ドキリとさせられました。
いつもは、キャラクターを変える時に、衣装も全部替えるのに、
ズラとメイクを変えるだけで、衣装を替えないのです。
衣装が同じで、別のキャラを演じるって、
かなり大変なことなのに、やっぱり全然違うんです。
さっきまでいた人と、目が違うんです。
イッセーさんのお芝居の楽しみ方を、またたくさん見つけました。

1.フェイドアウトして行く時の表情に、目を凝らす楽しみ。
イッセーさんのお芝居には、オチがわざとありません。
オチの場合は、暗転で照明がカットアウトします。
でも、イッセーさんの物語は、「その後、どうなったんや」と続くのです。
だから、カットアウトではなく、フェードアウトなのです。
「ああ、終わった」と油断しないで、暗闇に目を凝らす楽しみがあります。
幽霊が怖いのは、いきなり現れることではなくて、
ボンヤリ消えていくことです。

2.それぞれの物語に、勝手にタイトルをつける楽しみ。
ビデオではタイトルがつけられていますが、
ライブでは、タイトルがわかりません。
アンケートでは、きっとみんな自分勝手なタイトルをつけて
感想を書いているはずです。
たとえば、第1話を僕はこう呼んでいます。
「ワインの栓抜き女」
必死にワインの栓を抜く時って、不思議な素顔が出ますからね。
タイトルをつけてみると、イッセーさんの物語が、
シチュエーション先行で作られていないことに、驚かされます。
キャラクター先行のほうが、より難易度は高い技です。

                        中谷彰宏拝
P.S.
君が、どんなタイトルをつけるか、いつも楽しみです。