見ようとすればするほど、見えなくなる。
(3D立体図)
親愛なる君に

数年前に「3Dに見える本」が売れた時に、
実際見てみたら、3Dを見ることができなかった。
両目を寄せて、2つの黒い点が3つに見えるところで、
絵を見る方法も、ダメだった。
25センチ前の指の焦点を合わせたまま、
50センチ先の絵を見る方法も、ダメだった。
「見えた、見えた」という友達の隣で、
ちょっと寂しい気持ちで、諦めていた。
健康雑誌に、目を鍛える3Dという特集で、3D図が出ていた。
「これ、できないんだよね」と
独り言を言いながら、お風呂に入りながら、諦め半分でやってみた。
いきなり、カエルが目の前に飛び出してきた。
「ウワーッ」と、お風呂場で大声を出した。
3Dが見えた感動より、無防備なお風呂に、カエルがいきなり
飛び出してきたことに対する驚きだった。
そして、しばらくして、しみじみ感動がよみがえってきた。
一度、コツをつかんでしまうと、簡単だった。
ボンヤリとした3Dではなく、くっきりとした3Dだった。
つい、本の中に、手を入れたくなるくらいだった。
数年前は、まだレーシックの手術をしていなかったので、
3D立体視ができなかったのだ。
コツは、絵を早く見過ぎないことだ。
絵から探そうとすればするほど、絵にピントが合ってしまう。
絵のことなんか忘れて、黒点に焦点を合わせると、簡単だった。
これって、人生の真理だよね。

                        中谷彰宏拝
P.S.
この不思議な感覚を、君にも教えてあげたい。