子供の頃から、朝日を浴びて、育ってきた。
親愛なる君に

同窓会の総会で講演するために、大阪の堺に帰って、
会場のホテルに泊まりました。
24階の部屋は、東向きでした。
大阪では、スイートルームは、西向きに作られることが多い。
夕日が、絶好の景色だからです。
朝、カーテンを開けて、感動しました。
目の前に、山が広がっていました。
前夜は、夜遅く着いたので、山には気づきませんでした。
東京では、こんな山を見ることはできません。
その山の形は、子供の頃、毎日見ていた山の形と、
まったく同じでした。
それは、まぎれもなく二上山でした。
商店街にある家の前を通って、その後建てた家まで、
学校時代、毎日、帰っていました。
下り坂の向こうに、ふたこぶらくだの背のような形をした
二上山が、くっきりと見えていました。
地図帳で確認すると、それは真東の方向にありました。
あの坂道は、真っ直ぐ東西に延びた道だったのです。
新しいほうの家も、古い方の家も、
僕の部屋は、いつも東側にありました。
今、本を書くデスクも、東側に向いています。
高田馬場に住んでいた時も、東向きでした。
ぼくは、ずっと朝日を見て、育ってきたのでした。

                        中谷彰宏拝
P.S.
今、二上山のかわりに、東京タワーが見えています。
朝日は、同じように、東京タワーの方から昇ります。