痛いカレーを通して、父親は、人生の厳しさを教えた。
(父親のカレー)
親愛なる君に

ナンでたべるインドカレーも好きですが、
給食に出たシチュウ風のカレーも好きだし、
ごはんにかけるシャビシャビのカレーも好きです。
タマゴ好きの僕は、
シャビシャビのカレーに、生タマゴを入れて食べるのが好きです。
よくお店で、タマゴをオプションで頼むと、
「ゆでタマゴ」が出てきて、何度もだまされました。
我が家では、カレーは父親が作る担当でした。
どこの家庭でも、なぜだか、カレー作りはお父さん担当が多いようです。
父親は、甘党なのに、辛党です。
父親は、かなり自虐的なので、
父親のカレーは、もはや「辛い」というより、「痛い」カレーでした。
「額から汗を流しながら食べるのが、カレーである」
というのが、父親の持論でした。
僕は、カレーには生タマゴを入れたいのですが、
そんな「麻酔」を父親は許してくれませんでした。
せっかく作った「痛さ」が、味わえないと言うのです。
父親の目も血走っていましたから、
父親自身も、辛かったに違いありません。
タマゴを入れていいのは、お代わりからでした。
父親は、痛いカレーを通して、生きていくことの厳しさを
子供に教えていたのです。

                        中谷彰宏拝
P.S.
今は、1杯目から、心置きなく、タマゴを入れています。