人間違いするより、される側が、照れくさい。
親愛なる君に

サラリーマンをしていた性で、
「ああ、どうも」と、声をかけられると、
相手が思い出せなくても、ついニコニコ笑って挨拶をしてしまいます。
知り合いかと思ったら、
「いえ、読者です」という人と、長話ししていたということもあります。
「テレビで、いつも見ています」ということもあります。
おそるおそる寄ってくる人も、
緊張している読者の人ということもあるので、
知らんぷりをすることは、できません。
レストランで、遠慮がちに「あのう……さんですか?」と、声をかけられました。
緊張のあまり、「中消え」になったのだと思って、
「はい、そうです」と笑顔で応対しました。
しばらく話しているうちに、
「ところで、伊藤さんは……」と言われて、気づきました。
その人は、初対面の伊藤さんと待ち合わせをしていたのです。
あんなにニコニコ応対していたので、
「実は、伊藤さんではないんですが」と、ウソを告白するような
気まずい状況になってしまいました。

                        中谷彰宏拝
P.S.
近くにいた本人の伊藤さんも、気まずかったでしょうね。