何気なく手にとったものが、自分を呼んでいる。
(ボルサリーノ)
親愛なる君に

伊勢丹のブルガリに行ったら、堀米忠志店長が
「リニューアルしたメンズ館、おしゃれですよ」
と教えてくれたので、見学に行きました。
確かに、大人のお客様が増えていました。
並んでいる商品も、シガーに帽子。
僕は、何気なく、ひとつの帽子を手にとって、かぶってみました。
これが、なかなかいけるのです。
「まず、平行にかぶって、それからひさしを指で、こうして……」
と、お店の女性が教えてくれました。
「それから、こんな風にも、あと、こんな風にも……こっちのも、
おしゃれですよ」
と、いくつも、かぶってみました。
ソフトをかぶって、ダンスを踊る映像が、僕の頭に浮かびました。
結局、いちばん最初に、何気なくかぶったひとつの帽子を、買いました。
まったく、買うつもりではなかったのです。
呼んでたんですね。
これも、縁ですね。
帽子の神様ボルサリーノです。
若くては、着こなせない大物です。
家に帰って、映画『ボルサリーノ』のスチール写真を探しました。
アラン・ドロンとジャン=ポール・ベルモンドが、
それぞれ、ボルサリーノを違うかぶり方をしているオシャレな映画です。
堀米さんに、「ボルサリーノ、買いました」と言うと、
「きっと、買われると、思いました」と言われました。
帽子のかぶり方だけでなく、手入れから収納方法まで、
あっという間にレクチャーしてくれた高橋さんに、感服。
僕が、そのボルサリーノを買うことを予言していた堀米さんにも、感服。

                        中谷彰宏拝
P.S.
今度、そのボルサリーノをかぶって、デートしよう。