キャバクラは、男の精神を鍛える道場。
(とがしやすたかさん『男のいろは』)
親愛なる君に

とがしやすたかさんの『男のいろは』(講談社)で、
笑いながら、涙が出た。
風俗を舞台にした男のお客さんの悲しい性(さが)の物語です。
あいだみつおさん風のひと言に、泣かされる。

〈人生、やるか、やれないか〉
〈できなくなっていいじゃないか、素人だもの〉
〈はやくたっていいじゃないか、くろうとだもの〉

絵が抜群に上手い。
男の表情は、背中向きで、顔が見えないけど、
困った顔がわかって、背中に哀愁が張りついています。
自分のテーブルについたブスのホステスさんと、
隣のテーブルについた美人のホステスさんを、
ワンカットで描く構図の上手さ。
さらに、手書きの小さな落書きのようなセリフが、泣かせる。
ブスのホステスさんが言うセリフがいい。
「なんか、元気ないね」
そこで、人生の名言をつぶやく。

〈チェンジと言える、爽やかな男になりたい〉

チェンジって、気をつかって、なかなか言えないんだよね。
かわいいホステスさんの肩に手を回そうとすると、彼女がつぶやく。
「まったく、さっきのエロおやじったら、触ってばかりでキモイ」
「そういうところじゃないのにね。触りたいなら、そういう店にいけばいいのに」
そして、男は悟る。

〈いい人より、エロおやじになりたい〉

キャバクラは、男の修行の場所ですね。

                        中谷彰宏拝
P.S.
こういう男の悲しさを、理解してくれる君が好きだよ。