絵を着ていた時代の絵を描く難しさ。
(わたせせいぞう さん 『江戸恋もよう』)
親愛なる君に

『モーニング』連載中のわたせせいぞう さんの『江戸恋もよう』(講談社)
を、単行本で見直しました。
これは、かなり挑戦作です。

1.ドン引きロングショット。
わたせワールドの魅力は、ドン引きのロングショットです。
この作品では、さらにその大ロング俯瞰図に、
大勢の登場人物を描きました。
これは、かなり時間がかかっているはずです。
絵は、カット割したほうが、手間がかかりそうで、かからないのです。
映画の撮影と同じで、楽なようで、
ワンカット長回しは、猛烈に時間がかかるのです。

2.影。
窓からの光しかなかった江戸時代の屋内の色の微妙さが絶妙です。

3.色。
色は、時代によって、変わります。
さらに、着物という絵を着ていた時代です。
絵の中に、絵を描くことになるのです。

わたせさんにしか、できない作品です。
わたせワールドの魅力を再確認しました。

                        彰宏より。
P.S.
わたせさんのアトリエのある高輪には、
江戸時代の魂が宿っているんですね。