スミ影ひとつに、職人のこだわりがある。
親愛なる君に

僕は、タイトルの文字の「スミ影」には、こだわります。
文字を、より際立たせるために、文字につける影を「スミ影」といいます。
「スミ影」をつけることで、たとえば白い文字を、
白い背景に乗せることもできます。
僕の本のタイトルにも、「スミ影」が、よく使われています。
「スミ影」は、簡単そうで、なかなか奥が深いのです。
どういう角度でずらせば、いちばん文字を浮かび上がらせることができるか
なかなか難しいのです。
博報堂時代、この仕事を8年近くやっていたので、かなり鍛えられました。
文字や書体や画数や漢字か平仮名かによって、
ずらす角度を変えないといけないのです。
イージーに「スミ影」をつけてくると、
デザイナーにダメ出しをします。
それは、僕が同じように「ダメ出し」をさせられた経験からです。
たとえば「大人の恋」という文字では、
まとめてつけると、バラバラになります。
「大」と「の」と「恋」では、影の角度を変えないと、読みにくいのです。
「大」と「人」は、似ていますが、横棒一本あるだけで、
また違うのです。
一文字ずつ合わせずに、まとめて影をつけると、
先輩にバレてしまうのでした。
本の表紙の「スミ影」を、今度、よーく見てみてください。

                        彰宏より。
P.S.
職人芸が、財産になりました。