さっきまで、ここに幸せな誰かがいた息吹のある幸せ。
倉敷・大原美術館
親愛なる君に

映画『石井のおとうさん ありがとう』の撮影で、
倉敷へ行ってきました。
初めて行ったので、撮影が終わってもすぐに帰らないで、
街をウロウロしました。
物語にも登場する美観地区・チボリ公園・アイビースクエア・
大原美術館にも行きました。
日本最初の西洋美術館である大原美術館は、
その作品の凄さと膨大さに、驚かされました。
中で一番気に入った絵は、『夕景の小卓』という絵でした。
運河のそばに、小さなテーブル。その上に2つのティーカップ。
2脚のイスが、ついさっきまで人が座っていた気配があるのです。
しかも、その2人は、幸せな2人なのです。
イスをひいた時にした「コトッ」という音が、絵から聞こえてきます。
さっきまでここにいた2人の残像のように、花瓶が寄り添っています。
僕は、博報堂時代から、
「さっきまで、ここに誰かがいた息吹のある風景」が好きで、
そんなコマーシャルをたくさん作りました。
人が映っているより、人がいないけど、
幸せな息吹が残っているのが、好きです。
写真集『南青山の天使』を作った時も、
人を写さないで、息吹を撮りたかった。
「神と子と聖霊と」の「聖霊」とは、
まさに気配であり、余韻であり、息吹なのです。

                        彰宏より。
P.S.
さっきまで君がいた息吹を、感じてるよ。