絵と手紙が、人を勇気づける。
(父親の文通)
親愛なる君に

父親の趣味は、絵を描くことです。
大量に描いています。
もはや家に飾るところがなくなって、人にプレゼントしています。
絵のプレゼントは、押し付けになってはいけないので、
なかなか難しいものです。
父親が、ある女の子に、人形の絵をプレゼントしました。
その女の子は、ダウン症でした。
彼女は、絵の人形に名前をつけました。
そして、朝晩、絵の人形に話しかけるようになりました。
父親は、彼女と文通を始めました。
ひらがなだけの大きな文字で書いて送ります。
彼女は、手紙をもらうなんて、初めてだったそうです。
彼女は、返事をくれました。
やり取りをするうちに、最初はゆがんでいた字が、
だんだん真っすぐに上手になっていきました。
彼女は、学校に行く時は、両親が交代で送り迎えをしていました。
ある時、当番のお父さんが寝坊しました。
すると、なんと彼女は、1人で学校に行っていました。
初めてでした。
絵と手紙が、彼女に自信を与えたのでした。
父親の絵が、初めて人の役に立ちました。

                        彰宏より。
P.S.
ずっと前から続いていたのに、母親に聞いて、初めて知りました。
僕の部屋には、父親が描いたオードリーの絵が飾ってあります。