文字の少ない本ほど、長時間味わえる。
(『回転ドアは、順番に』穂村弘さん&東直子さん)
親愛なる君に

本を読む速さに自信のある僕が、
最も時間がかかる本が、詩集・短歌集です。
文字の少ない本ほど、読むのに時間がかかると考えて、間違いありません。
それは、文字の少ない本ほど、書くのに時間がかかるからです。
中谷ファミリーの全日出版・二宮由佳さんから
『回転ドアは、順番に』という本をいただきました。
穂村弘さんと東直子さんの詩と短歌のやり取りの本です。
僕が気に入った3つの詩。

〈冷蔵庫の扉を細く開けたままスリッパのまま抱き合う夜は〉(穂村弘さん)

僕は、こういうワンカットの絵が好きです。
ワンカットなのに、さっきまで愛しあっていたというのが、わかりますね。
2人は、裸に、スリッパですね。
冷蔵庫のほのかな明かりと、冷たさと、やがてドアが開いたままの
「ピーピーピー」という警戒音が鳴ってますね。
愛しあったあと、「ノドが乾いてない?」と、取ってきてあげる優しさがありますね。
ご主人の出張中に、お宅に上がっちゃったとしたら、ドキドキしますね。
「ごはんですよ!」とかあると、日常性が、またエッチでドキドキしますね。

〈くちびるでなぞるかたちのあたたかさ闇へと水が落ちていく音〉(東直子さん)
読んでいくうちに、2つ目、3つ目の意味があふれていますね。

〈くだものはなにがすきですか。
すいかが好きです。(中略)
キスはどうですか。
キスはくだものじゃありません。
ちがいますか。
はい、でも。
でも?〉(穂村弘さん)

「バナナはおやつかどうか?」というテーマは、
実は深い意味があったんですね。

                        彰宏より。
P.S.
「バナナは、おやつ300円に含まず、
キスもくだものだ」と、僕は信じています。