誰かに背中を押してもらって走ると、速くなる。
(ラン・フォー・ビジョン2004その3
親愛なる君に

「今年は、最初に中谷さんに勝った年の作戦に戻って、
ピッタリ後ろについていきます」
と、坪田一男先生は、宣言しました。
ついてこられると、前を走るほうには、圧倒的にしんどいことです。
いよいよ、スタート。
僕の手には、コースの予定タイム表と、
その裏には、谷川真理さんの美しいフォームの写真を握り締めていました。
レース展開は、スタート直後から、
オータパブリケイションズのアイアンマン、毛利伸さんが、
スパートしました。
一気に、オーバーペース気味の速い展開になりました。
(こんなに飛ばして、最後まで持つかな……)と、ちょっと心配になりました。
そこで、僕はある作戦に出ました。
一夜漬けで読んだ8冊のマラソンの本は、面白かった。
なぜなら、ボウリングやボールルームダンスと共通することが、
たくさんあったからです。

作戦(3)誰かに背中を押してもらっている感覚で走る。

そうすると、足からではなく、ボディから走れるので、
重心の下で、足を踏み出せて、エネルギーのロスがなくなるのです。
よく、記録を出したマラソンランナーは、
「誰かに背中を押してもらっている気がしました」と言います。
結局、それは、ボディリードで進んでいっているという、いいフォームなのです。
これは、まったくボールルームダンスと同じです。
僕の作戦とは、オーバーペース気味のレースを利用して、
前半で、坪田先生を振り切ってしまうという作戦でした。
この作戦のリスクは、自分自身のタイムを落としてしまうことです。
でも、僕は、坪田先生に勝つことを、優先しました。
ラストにも、最後の直線でスピード競争になった時のために、
エネルギーを残しました。
後半の上り坂は、曲がり道が多く、坪田先生の姿は見えなくなりました。
中谷彰宏 24分54秒。
前半のオーバーペースで、昨年より20秒、タイムを落としましたが、
25分を切る戦いという予定通りの展開でした。
坪田先生 26分34秒。
自己記録を昨年より20秒縮めたのは、それだけ若くなった証しです。
少なくとも、毎年、自己新記録を出し続けているのは、凄いことです。

                        彰宏より。
P.S.
結局、僕は、ライバル坪田先生に背中を押されて走りました。