天国に行く時は、愛する人の隣で、眠るがごとく。
親愛なる君に

母親は、いつものように、晩ご飯を食べて、
父親と並んでコタツで横になったまま、
文字通り、眠るように天国に旅立ちました。
愛する人の隣で旅立てるって、
なんとロマンティックな恋人同士でしょう。
最後の晩餐は、お寿司でした。
母親のお姉さんがやっているお寿司屋さんの手伝いをしている母親は、
そこに来たお客さんである父親と出会いました。
お寿司は、出会いの食事でした。
母親の顔は、棺に入っても、まるで眠っているように、幸せそうでした。
「彰宏、ママ、きれい?」という声が、聞こえました。
棺のフタを閉じる時、僕は、母親の右の頬を手のひらで包みました。
従姉の博千代姉ちゃんが、父親に叫びました。
「おっちゃん、もう1回、キスしたり」
父親は、母親の唇に、キスをしました。
何度も、しました。
火葬が終わった母親の姿を見て、親戚一同、声をあげました。
「やあ、きれいな頭蓋骨やわ」
真っすぐ置かれていた母親の頭は、左に傾いていました。
それは、僕が立っている方向でした。
手のひらで包んだ方向でもありました。
それは、最後に、2人並んで寝た時に、父親が寝ている方向でした。

                        彰宏より。
P.S.
ママ、きれいだよ。