東洋人の色の感覚は、決してモノクロだけではない。
(『LOVERS』)
親愛なる君に

チャン・イーモウ監督の『LOVERS』(ラヴァーズ)は、
色がきれいでした。
普通、あまりほめるところがない映画をほめる時に、
「カメラワークがキレイ」とか「色がキレイ」と言うんだけど、
『LOVERS』は、カメラワークも編集もすべていい上に、
なんと言っても、色が「けたはずれに」いい。
色を見るためにだけに、DVDを借りてきて見ても値打ちがあります。
できれば、ビデオよりも、DVDで見てみてください。
DVDの色のよさが、また改めてわかります。
同じチャン・イーモウ監督の『HERO』でも、湖の上での格闘シーンは、
湖面に映る緑がキレイでした。
中国映画というと、ワイヤーワークだとか、CGだとか思われがちですが、
結局、動きにしても、色にしても、監督の感性の勝負です。
格闘シーンで、いきなり背景が、同ポジションのまま、
一面の雪に変わるシーンが、こんなことをどうやって思いつくのかと、
芸術家にやられた痛快感がありました。
東洋というと、つい水墨画のようなモノクロのイメージがあるけど、
チャン・イーモウ監督の色は、原色であり、
初めて見る色でもあります。
東洋人の色に対する感性は、西洋人にないものがありますね。

                        彰宏より。
P.S.
美術館に行くつもりで、チャン・イーモウ監督のほかの作品も、
見なおしてみよう。